当法人では「ユマニチュード」という優しさを伝える技法を取り入れています。
今から20年ほど前、肺炎や骨折などで入院してくる高齢者の中には「痴呆」と言われる人がいて、対応が難しく、スタッフはどのようにケアをすれば良いのか悩んでいました。
介護保険法が制定された年に高齢者認知症対応グループホームを設立し、認知症研修を受けて学んだ内容を病院のケアに生かそうと試行錯誤しましたが、うまくいきませんでした。
そんな時、2014年に院内緩和ケア勉強会で「ユマニチュード」をテーマに取り上げ、翌年「エビデンスに基づく統合医療研究会」にてユマニチュード開発者であるイヴ・ジネスト氏と本田美和子氏の講演に参加したことが転機になりました。人間の尊厳を最後まで守ろうとする真摯な優しさに感銘を受け、私たちが取り組むべきケアだと直感しました。その後は、研修・セミナーに職員を派遣し、法人内学習会を繰り返し、日本ユマニチュード学会にも賛助会員として参加しています。
認知症の高齢者は、いろんなことに「以前のようにできない」と感じています。「そのできないことを言うのは恥ずかしい」「この先、私はどうなるのだろう?」「家族に迷惑をかけてしまうのでは‥」など考え、恐怖や不安、疎外感などの負の感情を抱いています。記憶の障害はあっても、感情は以前よりも豊かになると言われています。
家族や身近の人に失敗を責められることが続けば、強いストレスがかかり、精神的に不安定になります。怒りっぽくなったり、落ち着きがなくなったり、幻覚・幻聴や妄想などが出現するなど、いわゆるBPSD(認知症の行動・心理症状)が出やすくなります。ストレスには、精神的、身体的(痛みや発熱、脱水、視野視力なども)、社会、環境(温度、明るさ、騒音)や人間関係(信頼関係)などがあり、全てに注意が必要です。
このような患者さんへのケアの方法を体系的にしたものが「ユマニチュード」です。
次回は、その「ユマニチュード」について書きたいと思います。
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