入院された患者さまのご家族様から、「最近、認知症が急に進行した」というお話を伺うことがあります。
認知症の中で一番多いアルツハイマー型認知症は時間をかけてゆっくり進行し、症状は約10年くらいかけて徐々に進行していきます。
そのため、認知症が急に進行することは考えにくいと思われます。
認知症の症状には大きく分けて、
中核症状(記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失語・失認・失行)と行動・心理症状があります。
例えば脳の海馬というところが萎縮することで記憶障害が起こります。これは脳実質が障害されることで起こっています。
一方、行動・心理症状(妄想・ウロウロ歩き回る・興奮・攻撃的など)は、環境の変化やストレス、不安、周囲の対応、身体の不調や不快が原因となって現れる症状です。
大切なのはご本人の混乱や不安の原因を理解することですが、もしかしたらその背景には身体の不調(痛み、脱水、便秘、睡眠)が大きく影響している可能性があります。
特に夏は、汗や不感蒸泄で体の水分を失いやすい状態にあるため高齢者は脱水にも注意が必要です。
脱水になると一時的に認知機能が低下して、認知症が進行したように見えることがあります。
急に認知症が進行したのではと心配されているご家族や介護をされている方がおられましたら、ご本人が訴えることのできていない身体の不調はないか注意して観察し、早めの対応をしていくことも大切なケアとなります。
認知症看護認定看護師 藤原香子
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