ショートステイを長期にわたってご利用されている女性の利用者様がいます。重度の認知症を患っており、日常生活全般にケアが必要な方ですが、特に顕著なのが介護拒否です。排泄介助をしようとして引っ掻かれることもあり、スタッフもどう接していいか悩んでいました。
そんな中、排泄介助が終わったあとに「ありがとう」と言っていただけたことがありました。たった一言でしたが、男性スタッフには介助拒否が強くなることもあり、お礼を言ってもらえたのは私自身初めてのことで、とても驚きました。
なぜ「ありがとう」を言っていただけたのか? そのとき私は何をしたのか? 自分の行動を振り返ってみて、いつもと違うことといえば「背中を擦った」だけでした。
優しさを伝えるケア技法であるユマニチュードの4 つの柱の中に「触れる」があります。本当にそれがお礼を言っていただけた理由だったのか。自分のケアを見直してみることにしました。そして、排泄介助を行う際、入居者様は緊張して硬い身体になっているのではないかと考えたのです。それを解きほぐすように「優しく触れる」ことを意識して取り組むようにしました。子供の手を握るように優しくゆっくりと…。
取り組んだ効果は、すぐに表れました。排泄介助の介護拒否が格段に減り、それに従い「ありがとう」とお礼を言っていただけることも増えました。この経験を通して「優しく触れる」ことだけで拒否する心を解きほぐすユマニチュードの効果を感じることができ、同時にそれまでの自分自身の行動が相手を緊張させていたのだと理解しました。これからも利用者様に対しユマニチュードを心がけ、相手に受け入れてもらえるケアを目指します。
社会福祉法人健成会・加賀屋の森勤務 勤続18年
特別養護老人ホーム 加賀屋の森
https://kenseikaigroup.or.jp/kagaya/
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